くちびるが厚くて悩んでいる女性もいる。くちびるがぶ厚く口が大きいと口元に迫力がつきすぎて、豪快感ばかりが強調されてしまう。この場合の修正は、くちびるに横にメスを入れて縫い縮める。「なるほどねえ。じゃあ、やっぱり治してもらおっ」。ヒアルロン酸をくちびるの上下に注射したAさんは、手術台に仰向けになってからわずか一五分でセクシーな口元になっていた。局所麻酔が効いてまだ感覚がマヒしているくちびるを鏡に映しながら、彼女は自分の顔にうっとりしている。うっすら開いたくちびるは、かなりセクシーだ。「うふっ、イイ感じ」。こう呟いて満足そうにほほえむAさんに、ボクはもうひとつアドバイスした。「メイクするときはくちびるより一〜ニミリ外側にラインを描いて、仕上げにグロスもつけると、もっと色っぽくなれるよ」「リップクリームだけじゃ、ダメかしら?」「うん。あなたはくちびるの血色がそんなによくない。だから、やっぱり口紅はつけたほうがいい。それから、くちびるはキュッと結んだほうが知的に見える。このことも忘れないようにね」。年相応の色気のある女になってほしいと思ってアドバイスしたんだけど、はたして本人には通じたかどうか……?ボクはちょっと複雑な思いで、足取り軽やかに帰っていった彼女の後ろ姿を見送ったのだった。