カタカナ英語も一種のバイリンガル

2011-08-26

フィリピンでは、大学の授業も大統領の演説も英語です。街に出ると多くの人がピジン英語を話します。ピジンとは一種の混成語で、かつての植民地時代に、西洋人の領主と雇用されていた現地の人たちとの間に発達したことばです。領主のことばに現地語が混じってできていることばで、フィリピンではタガログ語などの現地語が混じった英語ですが、英語であることにかわりはありません。彼らは、現地語とピジン英語を状況によって使い分けながら併用します。ですから、日本人よりは英語は上手で、バイリンガルが多いのです。ピジンは、かつての宗主国すなわち主人のことばである英語が上で、奴隷または使用人の言語である現地語が下という、メジャー対マイナーの隷属的バイリンガルの結果生まれました。フィリピンのピジン英語は、そうした歴史的な力関係のなかで、英語の構造のなかにタガログ語などの現地語が混入してできました。しかし日本はそうではありません。日本語と英語の関係は、カナダのケベックのフランス語と英語に似ています。ケベックの人たちはフランス語が英語に劣るという意識を持っていません。大国フランスが控えているからです。もちろん、経済的格差はありますが、しかし隷属ではなく対等で、バランスが取れています。このような均等な力関係が保たれている言語問ではバランス・バイリンガルが広がります。バランスとは言語と言語の力関係の均衡が取れているという意味で、ケベックではフランス語も英語も、どちらかに隷属しているわけではありません。こういう関係が保たれているバイリンガル社会では、それぞれの言語にそれぞれの言語からの借入語が増えます。ケベックのフランス語にはたくさんの英語が入っています。lecarなどそのよい例で、フランス語の冠詞のleと英語の名詞のcarがくっついてできたものです。純粋のフランス語ではlavoitureというところです。日本語と英語の関係はこのバランス・バイリンガルの関係に近く、政治・経済的理由から英語のことばが日本語にたくさん入ってきていますが、先ほど述べましたように、日本語も英語のなかにたくさん入っているのです。英語を話すかどうかは個人次第。ですから、カタカナ英語のようなものが使われていること自体、実は、バイリンガルであると言ってよいのかもしれません。