開設は一九八八年の初夏だから、もうずいぶんの年月になる。看板が「内科」となっているのは、相談者の心理的な抵抗感を薄めるための配慮。また経済的な負担を考慮し、健康保険が使用できるシステムにしたためだ。診療時間は、月、水、金の午後五時半から八時半の三時間だけだ。「一日平均五人から十人ですね。もちろん赤字です。来院する人はゲイ雑誌の記事や広告、あるいは口コミで知るようですね。エイズ検査を中心に、梅毒、クラミジアといった性病の検査を希望してくる人も多くいます。簡単なものなら治療できるシステムにはなっています。でも、ここはあくまで窓口なのです。たとえば、エイズの抗体陽性者が出たとします。そのあとのフォロー体制がむずかしい。限界を感じますよ……。それでも、ほかにこんな場所はありませんし、頑張れるだけ頑張ってみるつもりです」このクリニックの運営責任者であるYさんは語る。彼は『THEGAY』の編集者でもあり、八時半にクリニックを閉めたあとは新宿二丁目でゲイバーのマスターもこなす。「お店でエイズに関するアンケートをとることがあるのですよ。三年前やったときには、エイズの感染にかなり注意し、セックスするときコンドームをちゃんと使用しているという人は八○パーセントいたのです。が、最近の調査だと四〇パーセントしかいない」お店に現われる客の中には、マスコミが騒いでないから、もうエイズは平気のだという人がけっこういるという。「友だちの友だちぐらいに、抗体陽性者がいたりすれば、彼らももっと注意すると思うのです。でも、いまのところ、そんな話はほとんど聞かない。だから、大丈夫とたかをくくっちゃうのですね。これからが不安です」Yさんは心配そうにこうつぶやいた。