ハノイの客引き

2012-01-14

ハノイで集めるつもりでいた。できるかぎり、ハノイに早く着きたいと思ったのはそのためだった。十五ドルという金額は、眉に唾をつけなければいけない金額だったが、想定内の額でもあった。ここで五ドルぐらいふっかけられていてもしかたないと思っていた。だいたいベトナムにはかつて外国人向けの二重価格があった。列車代や飛行機代は、ベトナム人価格の一・五倍から二倍の高さだった。それを彼らは当然のことと思っていた。鉄道の駅には以前、英語で堂々とベトナム人料金と外国人料金が記されていたものだった。

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その後、飛行機と列車の二重価格は廃止されたが、バスの運賃は不明瞭だった。買う場所によって違いがあった。チケットをつくりながら、その男が訊ねてきた。「ハノイからどこへ行くんだい?」「ビンあたりまで南下しようと思ってる」「ビン?だったらここでチケットを買うといい。ひとり二十ドルだよ」「ハノイから?」「そう。それからどこへ行くんです?」「ラオスに抜けようと思っているんだ。ビンからバスがあるかどうかわからないけど」「それなら心配ない。今晩七時に国境まで行くバスがある」「嘘だろ?」「本当さ。たまたまこれから私もハノイに行く。知り合いのホテルを紹介するよ。そこに荷物を置けばいい。シャワーぐらい使えるよ。ハノイに行ったときは私もそのホテルに泊まらせてもらうんだ。バスに乗るまで面倒をみるよ」「いくらなんだい?」「ひとり三十五ドル」