山口県の銘菓として有名な「豆子郎」はわらび粉とさらし飴を生地に使い、小豆をあしらった蒸し菓子である。これを作ったのは、元エンジニアの菓子職人であり、「とうしろう」との名前にもそのことが大きく関係している。その人物は満州鉄道のエンジニアであった田原美介氏。田原氏は、故郷の山口に戻ってきたものの、その技術を活かした仕事が見つからず、余る時間を妻と新しい菓子の研究に費やしていた。ユニークでアイデアマンであった田原氏は、新しい菓子が完成すると、菓子屋ではない自分が作ったということで「素人」という意味の「とうしろう」と命名した。この名前には初心を忘れずに奢るべからずとの思いを込めたともいわれている。この豆子郎が全国的に有名になったのは、田原氏が元エンジニアの腕を駆使して開発した密封包装で長期の保存が可能になったからである。加熱殺菌用のフィルムがなかった時代に材質から研究して密封包装を実現したのだ。こうして、長期保存が可能になったことで、全国に持ち帰ることができるようになり、お土産として定着した。現在では、その日の朝にできあがった豆子郎を蒸したての柔らかい口あたりのまま食べてほしいという思いから、創業当初に販売していた生の豆子郎が「生絹豆子郎」として復活、長期保存ができる豆子郎と一緒に店頭に並んでいる。
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