私が大学受験したころとくらべて、最近は大学受験産業のキメ細かいサービスが行き届いている。自分なりの課題を設定しようと思えば、必要な情報は手に入りやすい。たとえば、予備校の衛星授業は地方に入り込み、東京と地方の情報格差はかなり縮まってきたし、質のよい参考書や問題集の数も、私のころにくらべてかなりふえている。進学校にいなくても、そのつもりになれば、ほしい情報が手に入るようになった。ただ、ここに問題もある。逆に、あまりにも情報がありすぎるために、どれを信じていいのか、どうやって取捨選択していいのか、迷って決められなかったりする。せっかくの情報を、「宝の持ち腐れ」にしてしまう人も少なくない。「何を信じていいのかわからない」というのは、自分に対して自信が持てないことの裏返しでもある。たとえば、友人から「この問題集を、こうやって使ったら伸びたぞ」ということを聞いたとする。「ヘーそうなの。マネしてみようっと」となれるのは、その情報を「いい」と判断した自分を、とりあえず信じているからだ。「オレもあいつも同じ人間だ、あいつにできたことはオレにもできる」という健全な自己愛に支えられている。逆に、「あいつにはできても、オレにはできそうもない」とか、「試してダメだったらどうしよう」という不安が先行する人は、迷うばかりで実行できない。かといって、「信じられる自分」がないので、いつまでたっても、「かわりの課題」を自分で用意することができない。参考書をとっかえひっかえして、結局、一冊もやり通すことができない人も、同じジレンマに陥っている。たとえば、「この参考書はダメだ」という評判を耳にすると、とたんに不安になって勉強に手がつかなくなってしまう。「信じられる自分」がないと、情報を吟味して選択する自信もないため、いたずらに情報に振り回されてしまう。そんな状態から抜け出すには、マネでもいいから、とにかく自分で実際に試してみることだ。